ライフデザインセミナー Vol.6 朝日新聞DIALOG

『キャリア戦略における結婚の考え方〜する?しない?するならいつするのがいい?〜』

令和2(2020)年12月14日(月)に朝日新聞DIALOGのご協力により、東京都ライフデザインセミナーをオンラインで実施しました。

今回のオンラインセミナーには、都内在住・在勤・在学の約80名にご参加いただき、ライフとキャリアを両立し、相乗効果を生み出している方々の話を伺いました。

セミナーでは、サイボウズ株式会社代表取締役社長青野慶久氏に「結婚はキャリアの重荷になるか」をテーマにご講演いただき、その後青野慶久氏、井上千絵氏、堀込泰三氏の3名によるパネルトークを行いました。
パネルトークでは、参加者からの質問も受け付け、結婚・就職・子育て等様々なライフイベントに向き合う参加者の皆様に、これからの自身のライフプランを考えるきっかけとしていただきました。

青野さん・井上さん・堀込さん
青野さん・井上さん・堀込さん

基調講演者:青野 慶久 氏
サイボウズ株式会社代表取締役社長 兼 チームワーク総研所長
総務省、厚労省、経産省、内閣府、内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーを歴任
3児の父として3度の育休取得

井上 千絵 氏(株式会社ハッシン会議代表取締役)
民放テレビ局10年勤務。結婚・出産を経てPRコンサルタントとして独立 社会人経験後、大学院を2018年に修了し、現在は夫と5歳の娘と暮らす。

堀込 泰三 氏(在宅翻訳家、秘密結社主夫の友CEO)
大学院修了後、大手自動車メーカーに勤務。長男誕生時に2年間の育休を取得。
その後、専業主夫となり、今は翻訳家として在宅で働きながら2児を育てる。

<基調講演>

サイボウズ株式会社代表取締役社長 青野 慶久 氏

講演テーマ「結婚はキャリアの重荷になるか」

■講演の概要

青野さんご自身のキャリア・結婚・子育ての経験についてお話いただき、3回の育休を通して得た気づきについてお話いただきました。



■育児の感覚が変わった

青野さんは、第一子が誕生し、元々は仕事のアクセルを緩めるつもりはなかったのですが、あることがきっかけで育休を取得することを決めました。
当時、青野さんが住んでいた文京区の区長が育休を取得したというニュースを目にしたのです。偶然にも、区長のお子さんと青野さんのお子さんの生まれた日が同じだったことをきっかけに区長とお話しすることになりました。そして、話をするうちに、社長の自分が育休を取得すれば「男性育休社長」というブランディングができ、注目が集まるのではというメリットを感じ、取得することにしたのです。
会社イメージへの好影響を意図して取得した育休でしたが、取得後、育児に専念するうちに、育児の大切さに気付きます。今では「育児をしない社会には、次世代の市場もなく、未来がない。キャリアも大事だが育児を最優先にして生きていきたい」と思うようになったそうです。

また、育児と仕事の両立をしなければならない中で、社内での情報共有の大事さにも気づいたと話します。「時短勤務に切り替えたことで、これまでは朝8時から夜22時過ぎまでぎっしり入っていた仕事を、16時までに終わらせないといけない環境になりました。実働時間が短くなったのですから、自分が不在でも誰かが対応できるようにしなければなりません。そこで、会社全体で徹底的な情報共有を図り、チームで仕事をする組織を意識的に目指すことにしました。すると、自分だけではなく、会社の働き方環境が変わりました。時間に制約のある人でも最大限能力を発揮することが出来るようになったのです。育児の経験がなければ、得られない成果でした。」とお話してくださいました。

さらに、「子育ては社会に進出する手段」と話します。「就職をすると、一般的には『社会人』と呼ばれますが、会社は『社会』ではありません。会社だけに属しているのは『会社人』です。子育てをすると、PTA、病院、地域コミュニティなど、会社の外に広がる世界に顔を出すようになります。そして、会社だけの『会社人』から真の『社会人』になるのです。すると、当然、視野も広がります。これまでは思いも寄らなかったことに気づくことができるようになります。家族も大事に出来ますし、いいことだらけです。」



■自分にとって大切なものは何なのか

講演を通じて青野氏は、「私の場合は結婚や子育てで得られる幸せは何ものにも変えがたいと思いますが、『家庭での生活を重荷に感じるか、やりがいと感じるか』は個人の見方によって異なると思います。『結婚はキャリアの重荷になるか』については、答えのないテーマだと思います。」とおっしゃいました。最も大事なのは、「自分自身が人生で何を得たいのか、問いを立て続けること」だとお話いただきました。



<パネルトーク>

パネルトークでは、基調講演でのお話を踏まえて、社会で活躍されている青野さん・井上さん・堀込さん3名の結婚や子育て等家庭との経験、家庭と仕事との両立方法等をお話しいただきました。



井上 千絵 氏

当時は「結婚をするためには仕事を諦めなくてはいけない」という固定概念がありました。東日本大震災の翌日から被災地の取材に入るなど、仕事を最優先にしていました。元夫とは、未来の話をすればするほど溝が深まり、離婚に至ったと話します。

その後、井上さんはもう一度、自分も家族を持ちたいと思うようになりました。そのきっかけは、再び被災地を取材した際に、避難生活を家族単位で過ごす様子を目の当たりにしたことでした。
結婚を意識するようになった後は、どんな方と結婚したいのかを明確にし、自分の理想に合った人を周りに紹介してもらえるよう相談しました。
現在の夫とは、大学の先輩の紹介で知り合い、結婚に至ったそうです。

30歳の頃、これまでのキャリアに対して満足を感じ、次のキャリアを考えるためにお子さんが10ヶ月の時に大学院に進学しました。そして、在学中にPRコンサルタントとして独立を果たしました。



堀込 泰三 氏

大学院を卒業し、就職後に結婚。お子さんが生まれ、妻が育休を取りにくい環境でした。元々、堀込さんは、お子さんが生まれても仕事を続けるつもりでしたが、育休の取得が難しい職に就いている妻から仕事を辞めたくないという話があり、その気持ちを尊重したいと思い、育休を2年間取得しました。
育休後、一度は復職をしましたが、妻の仕事の関係でアメリカに駐在していた家族と離れる寂しさに耐えられず、退職し、専業主夫となりました。
その後、お子さんが大きくなり就職しようとした際には、前職から長いブランクがあるため、仕事を見つけるのには苦労したそうですが、今は、友人から紹介してもらった一般社団法人で生き生きと働いています。
現在の仕事をするうち、AIについて学びたいと思い立ち、今年から大学院に進学しています。堀込さんは、「人生の決断は、自分の興味に従って柔軟に選択している」とおっしゃっていました。



<Q&Aコーナー>

セミナーでは、3名からのお話を踏まえて、参加者からの質問を受け付けました。



■自分だけで描けない絵を描いている感覚

「結婚はキャリアの重荷になるか」という質問に対し、堀込さんは「家族ができて、自分だけで完結していた成功や失敗を共有することができるようになり、自分自身がパワーアップできた感覚です。」と話します。
また、堀込さん、井上さん共に「家族はチームだと思います。夫婦2人の世界で閉じることなく、実家や外部のサポートを活用して周りを巻き込みながら育児をすることを意識しています。行政の育児支援が充実しているので、どんどん利用すると良いと思います。」と話します。

井上さんは、「未来について考えるようになったのは、30代になってからのことでした。参加者の皆さんには、周りの人と未来について話すことは人生を豊かにすることにつながると伝えたいです。職場でもプライベートでも周りの人と未来について話すことは、人生をより自分らしく生きるための方法だと思います。」



Q&Aコーナーの様子
Q&Aコーナーの様子


■パートナーと向き合う姿勢

「パートナーとお互いに大事なことを共有したり理解し合うために、どのような声かけ・話し合いをしていますか」という質問に対して、3名の登壇者は「喧嘩しても意見が合わなくても、パートナーと向き合う姿勢自体が大事だと思います。結婚前に家事分担など結婚生活についてすり合わせても、共に生活をする中でもすり合わせなければいけないことは尽きません。思っていることを言わずに我慢していたら不満が溜まってしまうので、向き合って話し合う努力を欠かさないことが大事です。」と共通しておっしゃっていました。
堀込さんの場合、育休を取得するに至ったのは、妻が出産前に「仕事を続けたい」と打ち明けたことがきっかけでした。堀込さんのご家庭ではこのように、随時お互いの希望を伝えることを欠かさず、そのたびに話し合い、柔軟に対応するようにしているそうです。



■我慢せず、パートナーですり合わせ続けること

「結婚する前に、二人で話し合うべきことはあるか」という質問に対して、青野さんは、何を話し合うべきかは、人によって違い、唯一の答えはないとおっしゃいます。しかし、どんなにすり合わせても一緒に生活すると驚くことがあるので、違いを楽しめる自分でいることが最も大切なのではないかと話します。
井上さんは、二人で話し合い、家事のタスクを洗い出し、可視化してお互いの役割の共通認識を持つようにしているそうです。そうすることで、大変なのは自分だけではなく、二人で一緒に頑張っていることを感じることが出来、相手に対しても感謝の気持ちを忘れないでいられると話します。
また、堀込さんは、「自分のことのみならず相手がどうしたいかを考えることが大切だと思います。自分とパートナーがどう生きたいのかお互い考えることで、良い歩み寄りができるのではと思うからです。」と話します。

3名とも、すり合わせは一度ではなく、日々の生活の中ですり合わせ続ける必要があるので、それができるパートナーかどうかが大切だとおっしゃいました。
人生の決断は、周りの人や世間の価値観で判断するのではなく、「自分がどう生きたいか」に向き合うことが大切で、それが自分の納得いく人生を歩むための第一歩になるのではないかと話しました。

参加者からは、「登壇者の方々のキャリアがどれも全く異なっていて、聞いていて純粋に楽しむことができました。また、具体的に結婚後の夫婦の在り方について、実例を交えてお話ししてくださり、結婚に対するイメージがより具体的になりました。」や「登壇者の話を聞いて、結婚や子育ての不安が解消され、自分も早くライフステージを変えたいという気持ちが強くなりました。」という声をいただきました。

3名の登壇者の方々からは、結婚などのライフイベントを理由にキャリアを諦めなければいけないわけではなく、人生を自らデザインし、自分自身の納得する人生を歩むことの大切さを教えていただきました。

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