インドで出会い、東京で活躍するふたりTOKYO FUTARI

クリシュナ・セスさん(31歳)(仮名) 佳織さん(34歳)(仮名)

夫が仕事を辞めて来日

 インド生まれのクリシュナさんと佳織さんが出会ったのは、インド・ムンバイです。学生時代からインドが大好きな佳織さんは、一度は現地で暮らしてみたいという夢を実現するため仕事をやめて渡印していました。
 出会った当時、クリシュナさんは誰にでも親切な佳織さんが信じられなかったといいます。
「こんなに素敵な女性がいるはずがないから、この人には何か裏があると怪しんでいました。最初はやさしくても、いずれ変わってしまうのではないかと思っていました(笑)」
 でも、そんな予想も良い意味で裏切られました。悩みを打ち明けると、何もジャッジすることなく一緒に涙を流してくれた彼女に心を動かされたクリシュナさん。本当に優しい人なんだとわかってからは、すぐ結婚して一緒に日本に行こうと決めました。
 一方の佳織さんは、結婚して日本に一緒に帰ることに不安を抱えていました。
 もともとクリシュナさんはムンバイで映像制作の仕事をしていました。日本の言葉も文化もわからないのに、そのキャリアを捨てて来日することになれば、佳織さんは自分が何もわからない夫を守り、家計を支えなければならない。そんなプレッシャーに押しつぶされそうにもなりました。
 でも佳織さんが感じる不安一つひとつに対し、クリシュナさんは真剣に向き合い、議論し、決断していきました。中でも、佳織さんが特に不安に思っていた経済的なことはよく議論しました。佳織さんは、自分との未来を真剣に考えてくれるクリシュナさんの姿に「この人なら大丈夫」と思えるようになったそうです。
 結婚し、来日してからは、クリシュナさんは外国人でも働きやすい職種のアルバイトをしながら、映像の仕事に戻るまでの方法を模索していました。クリシュナさんが慣れない日本で頑張る姿に刺激を受けて、佳織さんもキャリアアップに挑戦。インド時代から携わるマーケティング分野で、さらにスケールの大きい仕事を担当できる会社への転職を実現しました。「何が幸いするかわからない」と佳織さんは言います。

 

何気ない日常の幸せに、育った環境の違いはない

 夫婦のコミュニケーションは出会った時からずっと英語です。クリシュナさんが来日して一番の驚きだったのは、日本人はだれでも佳織さんのように英語を話すと思い込んでいたうえ、文化もここまで違うとは思っていなかったこと。
「日本に到着して空港バスに乗ったら、車内が静かなことにまず驚きました。インドだったら皆が大声で好きなことを話すので」(クリシュナさん)
 それでもふたりは、異なるバックグラウンドを持つ者同士の結婚に、特に障害を感じたことはないといいます。
「様々ある届け出が大変で困ることはありましたが、夫婦の関係の中で、育った環境の違いを意識することは意外なほどありませんでした」(佳織さん)
 普段は仕事を終えたらどちらかが夕食を作り、一緒に食べながら映画を観るのが習慣になっているそうです。クリシュナさんは本格的なインド料理を作ってくれますが、ちょっと時間がかかるので、佳織さんがサッと和食や洋食を作ることも。週末は外食に出かけることが多く、定番はやっぱりお互いの大好物のインド料理。
 そんな風に二人で過ごす何気ない日常に幸せを感じる、こうしたところは国際結婚のカップルであっても、日本人同士のカップルと変わらないといいます。

  

東京にいたいインド人夫と、インドに帰りたい日本人妻

 佳織さんはおおらかで楽天的な性格であるのに対し、クリシュナさんはとても繊細で慎重です。
 「日本人である私の方がよほどインド人っぽくて、むしろ彼が日本人みたいだね、と言い合っています。彼が意外なほどスムーズに日本になじんだのは、そのせいなのかも」(佳織さん)
 来日当初はアルバイトをしていたクリシュナさんですが、今では売れっ子の映像作家。
「日本の言葉も文化もわからない夫は、私が助けてあげなければならない存在だったのに、気が付いたら、いつのまにか仕事を軌道に乗せている。もう私より稼ぐ月も多いくらい」と佳織さんは嬉しそうに語ります。
 佳織さんの夢は、「老後は大好きなインドに帰って、二人で住むこと」なのですが、クリシュナさんは東京での暮らしがとても気に入っていて、ずっと住み続けたいと思っているのだとか。
「僕にとって東京は、周囲から煩わしい干渉を受けることなく自由でいられる街です。その一方で、人々はみんなが気持ちよく暮らせることを大切にして、ルールを守って行動している。自由と秩序が同居しているところが心地よいですね」

ふたりのQ&A

Q
出会いは?
A
妻がインド・ムンバイで働いていた頃、現地在住外国人のSNSコミュニティに夫が間違って入っていた。
Q
初デートは?
A
「日本人はおいしい旬のマンゴーを食べたことがないだろう」と思った夫が、妻の自宅に山盛りのマンゴーを届けた。
Q
結婚への道のりは?
A
プロポーズは特になし。交際をスタートさせた当初から、夫は「君は僕と結婚することになると思うよ」と勝手に決めていた。
Q
家族構成は?
A
夫婦二人暮らし
Q
家計と家事の分担は?
A
夫に料理をしてもらうと必ず手の込んだインド料理になるので、待つのが面倒な妻がサッと支度してしまうことが多い。洗濯や重いものの買い出しは夫、家計管理は妻が担当。
Q
休日の過ごし方・よく行く場所は?
A
事前に決めたり約束はせず、二人でふらりと散歩に出たり、時には小旅行に出かけることも。

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