「気になるあの人をデートに誘いたい――」。そんなシーンはいくつになっても、ドキドキするもの。二人で過ごす最初の時間である初めてのデートでは、好印象を与えつつ、楽しい時間を過ごして二人の距離を縮めたいものです。そこで、ファーストデートを成功させる秘訣を、恋愛を科学的に分析する「恋愛学」の専門家、早稲田大学国際教養学部の森川友義教授に、伺いました。
初めてのデートに誘う際、オーソドックスで効果が高い方法のひとつとして、森川さんは「おまけ戦略」を挙げます。
「自分とのデートに相手が魅力を感じるような『おまけ』をつけることで興味を惹き、誘いに応じてもらいやすくする戦略です」（森川さん、以下同）
たとえば、相手がワイン好きなら、「おいしいワインを出す店を知っているので、ご一緒しませんか」と誘います。相手の大好きな「ワイン」の魅力が自分にプラスされ、相手の興味を惹きやすくなる効果が期待できるのです。
おまけ戦略を実行するには、事前に相手の好きなものや興味の対象を聞き出しておくことが重要です。それが映画やレジャーという場合もあるでしょうが、初めてのデートの「おまけ」に最も適しているのは、グルメ関連だそうです。
「最初のデートの鉄板プランは『食事』です。食事を囲めば、多少会話に詰まっても間が持ちやすく、お酒の力を借りて緊張をほぐすこともできます。また、美味しいものを食べて満腹になると、人はおだやかな幸福感に包まれるので、楽しいと感じやすいというメリットもあります」
最近はマッチングアプリで婚活する人が増えていますが、こうしたアプリで知り合った相手の場合は、ランチよりも夜のディナーがおススメだそうです。マッチングアプリのプロフィール写真には「とっておきの一枚」を使う人も多いため、初めて実際に会った時、お互いに「思っていたイメージと少し違う」と感じることがありえます。そこで、昼間の自然光の下で会うよりも、夜に雰囲気の良い飲食店で初対面を果たす方が、こうしたギャップを軽減しやすいというわけです。
森川さんは「人は五感で恋をするため、本能的に清潔感のない人を避けようとします。特に男性は、「清潔感の『はひふへほ』（歯磨き、ひげ、ふけ、ヘアスタイル、ほほえみ）」をチェックし、清潔感のある装いを心がけましょう」とアドバイスします。
会話を盛り上げるには、「あいうえお」と石田純一さんが提唱した「さしすせそ」がポイントです。「あいうえお」は「ありがとう、いいですね、うれしいです、えらい、おもしろい」。「さしすせそ」は「さすがです、知らなかった、素敵ですね、せっかくですから、そうなんですか」というキーワードです。
「これらのキーワードを使うと相手が自分を認めてもらえていると感じ、会話が弾みやすくなるのです」
さらに、相手に好印象を持ってもらうためには、「やさしさ」が大事だといいます。
「相手に『自分は大切にされている』と感じてもらえるようなふるまいを心がけましょう。たとえば、待ち合わせには早めに到着して自分から声をかける、おすすめメニューを事前にリサーチして勧める、といった些細な気配りでも相手は嬉しく思い、『やさしい人だな』と感じるものです」
また、「将来の夢」について話すこともおススメだそうです。今より成長した将来の自分の姿をイメージさせることで、より魅力的な自分をアピールする効果があるといいます。ただし、明らかに実現可能性が低い夢を語ると、現実が見えていない人と思われるので逆効果。努力すれば手が届く夢であることが重要です。
互いの印象を確認する最初のデートでは、あまり長時間のプランは組まず、食事だけで終わるのがいいでしょう。ただ、次のデートに応じてもらえる見込みがあるかを、会話の中でそれとなく確認しておきます。
たとえば、相手がワインだけでなく日本酒も好きだとわかったら、『今度は日本酒の美味しい店にご一緒するのはどうですか』などと振ってみます。相手が乗ってくれば具体的なプランを相談してもいいでしょう。
「興味がなさそうだったり、話題を変えられてしまうようなら、あなたを傷つけないようNOのサインを送っていると受け止めるのが無難です。その日の出会いに感謝し、次の出会いに向けて気持ちを切り替えましょう」
いずれにしても、デート後は翌日までにお礼のメッセージを送っておきましょう。「次はないかな」という相手の場合は、その日のうちにシンプルなお礼のメッセージを送ったうえでやり取りを終わらせるのがスマートです。
ファーストデートを成功させる秘訣について、森川さんは最後にこうアドバイスします。
「１対１で会わなければわからないことは多いので、事前に過度な期待をしないことが大切。相手を減点評価するのではなく、良いところを探そうという気持ちで臨むと楽しい時間となり、次のステップへ発展する可能性も高まります」
交際に向けた大切なステップであるファーストデート、素敵な時間を演出し、気になる人のハートをつかみましょう。
森川友義／早稲田大学 国際教養学部教授 恋愛学者
専門分野は進化政治学、日本政治、恋愛学。早稲田大学で開講している「恋愛学入門」は学生から絶大な支持を得ている。著書に『なぜその人に惹かれてしまうのか？』（ディスカヴァー２１）など。